あまり知られていないが県内では昔からの競合校
静岡県高校野球界では、名門中の名門の静岡高校(静高)です。1896年創部、1926年の全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高等学校野球選手権大会の前身)で優勝しています。ゼンバツでは静岡県勢の優勝は、韮山、静岡商業、浜松商業、常葉菊川がそれぞれ1回ずつ優勝し4回ありますが、夏の大会では静岡県唯一の全国優勝です。
1930年に静岡商業と天覧試合を行い、これをきっかけにして天覧試合が行われた5月に毎年静岡商業との定期戦を行っています。静岡の早慶戦とも呼ばれています。
プロ野球にも人材を輩出しており、現役選手では北海道日本ハムの増井浩俊投手、楽天の堀内謙伍捕手(2015年ドラフト4巡目)がいます。昨年のドラフトでは鈴木将平外野手が埼玉西武に4巡目で指名されました。引退した選手では、近鉄、巨人で活躍した高木康成投手が記憶に新しいところです。
センバツは今大会を含め16回、夏は24回甲子園に出場しています。2014年以降に限ると、今回のセンバツを含め甲子園に出場できるチャンスは7回あったのですが、静高はそのうち4回出場しています。2015年の夏からは3季連続して出場しており、一時の低迷は脱していると思います。
しかし甲子園での戦績は、昨年のセンバツではベスト8まで勝ち上がりましたが、夏は2回とも1回戦敗退。全国でも通用する戦力であるため、少し期待外れの感があります。常葉菊川以来の優勝を期待する静岡県民、野球ファンは多いと思います。
進学校としても有名
静高は県下でも有数の進学校で、入試難易度の高い高校です。県立の進学校でなぜ野球が強いのか、その理由は学校裁量枠です。静岡県の公立高校では、通常の入試に加え、各高校独自の選抜方法によって合格者を決める学校裁量枠を採用しています。静高では、体育的活動の野球(男)について実績、適性、活動意欲を判断基準に、合格者全体の3%程度を合格者にしています。もちろん野球だけではダメで、調査書の9教科の評定が一定以上の水準でなければならなく、学力検査で著しく低成績では合格できません。
裁量枠ゆえに学業で優遇されることはなく、通常の入試で入学した生徒と、同じ授業を同じ時間受けるので、学力がなければ3年間地獄のような日々が続きます。また進級も卒業もおぼつきません。私立高校のスポーツ推薦制度とは大きく異なります。
今年のチームは?
さて、今年のチームは左の池谷、右の竹内の二枚看板となる投手を中心にしたチームです。
竹内奎人は、中学時代にU-15日本代表に選ばれ、第2回15U野球ワールドカップに出場しました。テレビ朝日系の番組「ビートたけしのスポーツ大将」に出演したこともあります。静高入学後は1学年上に昨年までのエース村木がいたため、主戦としての活躍はありませんでした。
池谷蒼太は、鳴り物入りで入学した竹内を抑え、新チームのエースの座につきました。速球にスライダー、カーブ、チェンジアップを交えて投球を組み立て、小気味いい投球をします。右の本格派竹内に比べると、左の池谷の方が対処しにくい投手であり、また伸びシロもありそうです。
秋季大会では、中部地区大会でライバル静岡商業に10-3で勝つなど、順調に勝ち進み優勝。しかし、県大会では準決勝で聖隷クリストファーに0-1で競り負け優勝を逃しました。東海大静岡翔洋との3位決定戦を勝ち、何とか東海大会への切符を掴みました。
静岡県3位で臨んだ東海大会、1回戦で愛知2位の桜丘、準々決勝で三重1位の海星に勝つと波に乗りました。準決勝で三重3位ながら近年好成績を収めている三重高校に9-2、決勝でこれも愛知3位ながら近年力をつけている至学館に5-1と快勝して優勝しました。
東海チャンピオンとして臨んだ明治神宮大会、初戦となった2回戦で全国注目の早稲田実業と対戦しました。序盤エースの池谷に硬さがあったのか、4回までに5四死球を与え3失点。一旦静高が同点に追いつくも、7回に2点勝ち越され惜敗しました。負けてはしまいましたが、序盤崩れたものの試合を壊さなかった池谷には良い経験となったことでしょう。
一冬越して打力が強化され、投手力、守備力が一層安定していれば、センバツ優勝も決して夢物語ではないと思います。