今年の春先から楽天の新人と言えば、甲子園を湧かせたスター・オコエ瑠偉が話題を独占。しかし、いざキャンプに入ると茂木の実力を評価する声が増えていき、勢いそのままに球団史上初の新人野手による開幕スタメンを勝ち取ると、ここまで低迷するチームの中で奮闘。パの野手としては西武・小関竜也(現・巨人コーチ)以来の新人王を狙える位置につけています。既にチームに欠かせない存在となっている茂木、改めてその魅力や経歴を紹介します。
【簡単なプロフィール】
名前:茂木 栄五郎
出身:東京都小金井市
生年月日:1994年2月14日生まれ(22歳)
身長体重:171cm75kg
守備位置:内野手(右投げ左打ち)
出身校:桐蔭学園高→早稲田大
【経歴プロ入り前】
超名門の武蔵府中リトル、シニアを経て桐蔭学園に進学。
1年秋に三塁手のレギュラー。打っても1番を務め、神奈川大会は東海大相模相手に惜しくも敗れるも準V。更に関東大会では初戦で4番を務め、先制となる2点本塁打を放つ活躍。
次戦では東海大望洋の剛腕・長友昭憲(現・JFE東日本)相手に安打を量産し、その打撃能力の高さを見せつけました。
2年春は死球による左肘骨折で長期離脱。チームは春季県大会で準々決勝に進出するも、自身の出場は叶いませんでした。
何とか間に合った2年夏は再び打線を牽引し、準々決勝へ。相手は前年秋に勝利を収めている横浜高校でしたが、エース・斎藤健汰の好投と乙坂智(現・DeNA)の活躍の前に敗退。とはいえ、自身は横浜戦でも活躍し5試合で5割越えという高打率を残しました。
2年秋は4回戦、翌春は準々決勝で敗退。いずれも県大会止まりでしたが、県内屈指の内野手としての評価を不動のものとしていきます。
そして3年夏、主に4番として臨むと茅ケ崎西浜の古村徹(現・愛媛MP)、川崎工科の青柳 晃洋(現・阪神)と後にプロ入りする好投手たちからホームランを放つなど厳しいマークの中で結果を残します。しかし、準決勝で桐光学園に内野安打1本に抑えられ、チームも接戦の末に敗退(相手の先発は当時1年生、後にチームメートとなる松井裕樹(現・楽天)でした)。
残念ながら、高校3年間で全国出場は叶いませんでした。それでも、文武両道・成績優秀であったことから指定校推薦により憧れの早稲田大に入学を果たします。
早稲田大学に進学後は、1年春から三塁手のレギュラーとしてリーグ戦に出場。勝負強い打撃と守備を武器に全試合戦い抜き、ベストナインを受賞する活躍でリーグ優勝に貢献。その年の全日本選手権優勝を経験、大学日本代表候補に選ばれるも、怪我の影響で辞退。
その後も秋・翌春と出場を重ねますが、2年秋は抱えていた不整脈の手術により1試合の出場のみ。しかし、離脱中のウェイトトレーニングと精神面の進化により、翌春から更に進化した姿を見せます。
3年春、自身リーグ戦初の本塁打を放つなど長打力を発揮。ハーレムベースボールウィークの日本代表に選出されると、主に3・5番といった主軸を務めます。
そして3年秋、打率5割越え・長打率8割という驚異的な数字を残し首位打者。この活躍で一気に注目度を上げると、4年春には二塁手にも挑戦しつつ、バックスクリーンへの2弾を含む5本塁打に4割近い高打率をマーク。自身2度目のベストナインを受賞し、以前に受賞した1年春以来のリーグ優勝を経験。勢いそのままに全日本選手権でも2本塁打、首位打者・大会MVPに輝く活躍でチーム3年ぶりの優勝に導きます。
同年夏の夏季ユニバーシアード大会では大学日本代表の5番一塁として活躍し、優勝に貢献。
最後の4年秋は大きく成績を落とすも、2季連続優勝・明治神宮大会準優勝を経験しました。同秋のドラフト会議では上位指名が有力視されていた中、楽天が3位指名。当時から3位指名は「お買い得」といった声も少なくなかったように思います。
【経歴プロ入り後】
キャンプからその打撃技術に高い評価を受け、守備でも高校で経験して以来の遊撃手としてプレー。オープン戦では打率こそ2割ちょっとながら、2打席連続ホームランを放つなどアピール。守っても遊撃手としてチーム最多の出場を果たし、開幕1軍を勝ち取ります。
更にはチーム史上初の新人野手での開幕スタメンを達成。開幕カード2回戦でプロ初安打を記録すると、以後は遊撃手という要職を務めながら出場を続けていきます。当初はプロの主力投手に苦しむ場面が多かったものの、段々と主軸を務める試合も増えていきました。
ここまで、負傷による登録抹消は経験も再調整による2軍落ちは無く、苦しむ楽天の中で特に奮闘している選手の一人と言えます。その活躍から、現在は日ハム・高梨裕稔、オリックス・吉田正尚ともに新人王の有力候補となっています。
【魅力や特徴】
高校時から自然体の構えで、持ち前のバットコントロールで打ち分けるヒットメーカーとしての資質に高い評価を受けていましたが、そこに大学の4年間で「長打力」という魅力もプラスしました。小柄ですが、角度をつけて技術で遠くへ飛ばすワザとフォローの大きな高速スイングによって、見た目からは想像できない飛距離を誇ります。
また、守備は慣れない遊撃手としてプロでも大いに健闘しているといえます。三塁手として捕球・送球は安定していましたし、あまり注目されることは無かったですがプロの中でも「俊足」と言える脚力の持ち主。それだけに二塁・遊撃でのプレーが期待された訳ですが、高校で一時期取り組んでいた際には素早いアクションの中でのプレーに不安がありました。また、学生の頃はどうしても打撃の魅力・役割が大きかっただけに守備の負担を増やすよりは…というところもあったのかもしれません。
西武以外の遊撃手を固定できているパ4球団のレギュラー遊撃手と比較しても、当然現状は守備は劣ると言わざるを得ません。しかし、いきなりのプロの1軍という舞台で打撃でも大きな役割を担い、長いシーズンを戦いながらと考えれば素晴らしいですし今後も期待できるのではないでしょうか。
【まとめと将来について】
プロ入りまでのチーム・学校からすると、ずっと名門で華々しくエリートの道を通ってきたように見えるかもしれません。しかし、各ステージで常に声を張り上げながら泥臭く全力プレー。野球以外の面でも怠ることなく必死に取り組んできたことで積み上げてきた野球人生と言えます。
その姿勢はプロでも継続しており、身近な先輩を手本に積極的に学ぶことで攻守に更に成長を見せています。走攻守のバランス・打撃は勿論ですが、こうした学び・努力し続ける姿勢こそが一番の魅力なのかもしれません。
下半身の驚異的な粘りを持つ森友哉(西武)とはタイプが違うものの、同様に小柄でもプロでスラッガーを目指せる資質の持ち主であると感じます。本人目指す方向によっては、よりヒットメーカーとしての成長も望めると思いますが、楽天の生え抜きでは初といえる真のスラッガー誕生を期待してしまうのは私だけではないはずでしょう。
最後に「茂木!茂木!茂木栄五郎!!」というフレーズの応援歌にどこか親しみを感じます。球場に足を運ばれた方は応援歌にも注目してみて下さい。